みくは迷っていた。「ちょっと5分いいかな。」東京に来てはや2年。こういったキャッチには何度もあった。「○○社の者なんですが…」得体のしれない会社。「○○っ雑誌知ってますか?」胡散臭い雑誌。この程度ならまだいい。キャバやヘルスのキャッチはしつこくてタチが悪い。彼女のそのスタイルの成果せいか、一日たりとも声をかけられないことはなかった。年相応に男性経験も積んでいるし、Hも嫌いじゃない。むしろ好きなほうだ。それでも街に出るたび彼女に向けられる視線、胡散臭い男たちからの誘いに彼女は若干男性に対して恐怖すら感じるようになっていた。そんなある日今日も声をかけられる。若干迷惑そうに振り返る。その時みくに電撃が走る・・・。みくは生まれて初めて一目ぼれを体験することになった。足を止めて、男の話を上の空で聞く。連絡先にと名刺を貰った。家に帰り彼の事を思い出す。ここまでの出会いはないかもしれない。そんな想いすらよぎる。彼にもう一度会いたい。今度は私から話しかけたい。気づいたら彼女は電話を握りしめていた。彼はあっさりと捕まり、翌日駅前の喫茶店で詳しい話を聞くことになった。翌日…足取りが軽い。こんな気持ちで街を歩いたのは久しぶりな気がする。今日ばかりはしつこいキャッチたちも自分の女としての価値を認めてくれているかのように感じられる。彼との再会がこんなにも嬉しいとは自分でもちょっと意外だった。約束の店に着く。彼はもう店にいた。挨拶もそこそこに彼は彼女に必死になってスカウトをはじめた。昨日は放心状態でほぼ聞けてなかった話だったのだが、実際ちゃんと聞いて彼女が驚いたことはそのスカウトがAVのスカウトだったことだ。いくらなんでもAVは…でも、この出会いが偶然なのだろうか、それとも…そう思っているうちに口が勝手に開いた「あの・・・お兄さんが相手をしてくれるならいいですよ。」自分で何を言っているのかがわからないが間違いなく恥ずかしいことを言っているのだろう。顔が真っ赤になると同時に彼が私の手を掴んだ。